民間から霞ヶ関に1年間出向してわかった国家公務員のリアルな姿

  • (2019.06.17 公開)
  • (2019.12.10 更新)
民間から霞ヶ関に1年間出向してわかった国家公務員のリアルな姿

皆さんは霞ヶ関の国家公務員に対してどんな印象を持っているだろうか?ありきたりなイメージかもしれないが、自分が抱いていたのは優秀な人が集まっていて、仕事もほどほどに定時で帰って安定的な生活をしている人たちというイメージだった

そんな自分は民間企業から霞ヶ関に出向して約1年程度になる。1年間霞ヶ関で働いてみて感じた国家公務員の働き方や職場環境に関してレポートしたい。

目次

  • 霞ヶ関のリアルな職場環境その1(動かないパソコン)
  • 霞ヶ関のリアルな職場環境その2(「超」縦割りの組織構造)
  • 国家公務員はもっと世間から認められていい。
  • 最後に
 

霞ヶ関のリアルな職場環境その1(動かないパソコン)

霞ヶ関のリアルな職場環境その1(動かないパソコン)

自分が民間会社から出向してきて一番驚いたのがパソコンの動作の遅さである。控えめに言って「最悪」だった。

これは自分のパソコンに限った話ではなく幹部陣も含めた全体的な話である。

まず、パソコンを使っていて日々起こることを列挙してみる

  • 起動に40分かかる
  • 200KBのエクセルを開いてフリーズ
  • キーボードを打ってから文字が表示されるまでに1、2秒のタイムラグが生じる。
 

ちなみに、これらはたまに起こることではない。日常レベルの話である。形も見た目も分厚くてまるで初代ニンテンドーDSを彷彿させるルックスである。

こんなパソコンでは作業をしていても頻繁に作業が停止してしまうので非常に効率が悪い。

作業的な業務は特にリズムよく片付けることが大事なので、細かく作業が止まってしまうことは業務効率的には非常に環境が悪い。

ちなみにパソコンはシャットダウンせずに帰ることが多い。普通考えられないことだと思うが、理由は単純で、起動するのが遅いからである。自分も一度パソコンの起動だけで1時間かかり、その間に何も作業ができないことがあった

また、急に資料を印刷しないといけない時にパソコンがフリーズしてしまうと周りの人のパソコンで書類を印刷させてもらうといったことも割と日常的な風景である。

このパソコンは一体いつから使っているのだろうと思い、ふとパソコンの裏面に記載してあるリース期間を見てみるとリース期間がすでに終わっていた。

このように、なかなかひどい作業環境なのに『印刷は極力減らし、ペーパーレス化を推進すること。』という内容のメールや通知はばんばんやってくる。ページをスクロールするだけでフリーズしてしまうのに、どうやって印刷を減らせというのだ。

この話を聞くと「パソコンを入れ替えればいいじゃないか」と思うかもしれないが、それもどうやら単純な問題ではないらしい。結論から言うとパソコンを入れ替えられない理由は「予算がないから」だそうだ。

職員のパソコンを入れ替えるためにはそれなりの予算が必要だが、予算をとるためには、その予算が必要であると説得できる数字とそれを裏付ける根拠が必要なのだ

しかし、パソコンがフリーズしてしまうことによる損失や、パソコンを新しくすることによって削減される残業代などはシミュレーションが難しい上に証拠が出せない。

さらには「国家公務員がパソコンを入れ替えるために税金を使った」という事実だけで世間からの批判が起こる可能性があり、踏み切るには勇気がいるのだ。

そうは言っても今の作業環境ではペーパーレスも働き方改革も程遠い。

霞ヶ関のリアルな職場環境その2(「超」縦割りの組織構造)

霞ヶ関のリアルな職場環境その2(「超」縦割りの組織構造)

通常の民間会社でも、グループ会社間、本社と営業現場、本社の部署間などそれぞれが独立してなかなかうまく連携できないいわゆる「縦割り状態」となっていることも多いと思うが、霞ヶ関ではさらに超縦割りな状態がおこっている。

霞ヶ関の組織体系としては〇〇省〇〇局〇〇課と分かれていき、そこからさらに役割ごとに〇〇室、〇〇班という風に細分化されていく。

これだけだと民間企業ともあまり変わらないのだが、霞ヶ関では座る席ごとに〇〇係といったように仕事が振り分けられているのだ。そしてその座る席ごとによって忙しさが違う。結果として、全く同じ部署にいても座っている席によって比較的早く帰れる人と毎日帰りが遅い人がいるのだ。

「あの部署は忙しい」という言葉が一般的に使われると思うが、霞ヶ関では「あの席は忙しい」という言葉がよく使われる。

もう一つ特殊な文化だと感じたのが、違う課になると「他社の人」くらいの距離感がある。それを象徴するのがメールの文章だ。

他の課の人にメールを送るときの書き出しが「〇〇様 お世話になっております。」なのである。

これには最初かなり驚いた。ちなみに同じ課や室の人でもメールの書き出しは基本的に「〇〇様」である。

こういう文化が根付いているからか、同じ職場の人なのに心の隔たりを感じることがある。

自分の部署は幸いなことに周りの人と心の隔たりはあまり感じないのだが、あいさつもどこか形式的で無機質な感じがする。同じ職場でありながら「仲間感」を感じにくい環境になっている。

今、世間では働き方改革など、職場環境の改善が叫ばれているが、働き方改革の第一歩はあいさつだと思っている

朝には「おはよう」、誰かが外出したり、外出先から帰ってきたときは「いってらっしゃい、お帰りなさい」帰るときには「お疲れ様です」と一言声をかけるだけで職場の雰囲気はガラリと変わるのではないだろうか。

国家公務員はもっと世間から認められていい。

国家公務員はもっと世間から認められていい。

さっきまではネガティブな部分ばかり紹介してしまったが、強く感じたのは国家公務員は「かんばっている」ということだ

少し雑な表現になってしまったが、霞ヶ関にいるみなさんはひとりひとりがいろんな業務を担当していて、夜も遅くまでがんばっている。その割に世間からの風当たりは少々強いように思われる。

ちなみに現在NHKが「霞ヶ関のリアル」というテーマで特集を組んでおり、霞ヶ関の官僚の生々しい声が取り上げられているのでぜひ時間があるときに見てほしい

【NHK】霞ヶ関のリアル

この特集の中には「午前3時まで働いた妊婦の方の話」「忙しくて子どもが持てない夫婦の話」などなかなか衝撃的なワードが飛びこんでくる。

事実、自分のいる部署でも、法律の改正をやっている人たちは忙しい時は毎日2時、3時まで働いて正月休みも返上して仕事をしていた。

自分が朝に出勤したときに家に帰らずにデスクで仮眠をとっている人を見るとなかなか心が痛むものである。

しかしながら、世間の人たちは国家公務員がどう働いているかを知らない。むしろメディアが取り上げるのはがんばっている官僚の姿ではなく、官僚の不祥事ばかりである。

そして、その一部の官僚の不祥事によって、多くの職員がその対応に疲弊し、本来業務を後回せざるを得なくなる。

そういう陰ながらがんばっている国家公務員の姿を見ていると将来天下りすることくらい許してあげてよとさえ思ってしまう笑

残業代というパイを職員で取り合う

残業時間が長いとしてもまだ残業代がきっちり支払われるならいい。しかし、実は働いた分の残業代が満額支払われるとは限らない

これはなぜかというと、国家公務員の残業代は部署によってあらかじめ予算が割り当てられており、その上限に達してしまうとその後はいくら働いて支払うお金がなくなってしまう

結果として、自分だけ残業しているならば残業代を総取りできるが、みんなが忙しくて残業すると残業代の奪い合いになるという謎の図式が出来上がる。

酷い場合は月に150時間〜200時間働いて残業代が10万円ということもあるようだ。時給に直すと600円程度であり、アルバイトしている人の時給より低くなってしまう。

最後に

民間企業から霞ヶ関に出向して1年経ったが、この記事で紹介したように想像していた国家公務員像とは全然違っていた。

ちなみに霞ヶ関といってもそれぞれの省庁や部署によって働き方や文化は全然異なるそうだ。

そうは言っても自分が1年間霞ヶ関にいて感じたのは厳しい労働環境の中でがんばっている姿だった。

この記事を見て霞ヶ関の国家公務員の方々の姿が少しでも伝われば嬉しい。